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山本兼一著『信長死すべし』文庫本カバー

山本兼一著『信長死すべし』(角川文庫 12月25日発行)。
表紙カバー描き下ろし。

2014年2月に逝去された山本さんの新刊。
2012年の単行本の文庫化。

デザインは、坂詰佳苗さん

時はタイトルの通り戦国時代。“本能寺の変”までの1ヶ月ちょっと前から日誌のように政権周辺にいる人々の信長を疎ましく思う日々が綴られる。とても面白い。『利休にたずねよ』は時間がさかのぼったが、この作品は時間が”その日“ に進んでいく。お薦めです!

カバーデザインを決める時、何種類かのアイデアを提案していた。ちょうどその時、夢に山本さんが現れた。 紺色のポロシャツにグレーのチノパン姿の山本さんがこちらを向いて和室で座布団の上に正座している。奥さんは山本さんの一歩後ろで正座してこちらを向いていた。編集者さんだろうか・・・私の右手には誰かがいて山本さんと向き合って座っている。
いつものように満面の笑みで唇をとがらせて喋りながら私に証書を渡す。私はそれを「受け取れません」「書き直してください」と言って突き返す。それを繰り返す。後ろから奥様が困った表情で、私に向かって何度もぺこぺこ頭をさげるのだ。その証書は「私は二週間後に死にます」というものだった。「書き直してください。もっと生きる。これからも書き続けるって書き直してください」と、また証書を突き返す私。「いやいや、これは決まってる事だから。ははは(笑)いいんだよこれで(笑)」と笑ってる山本さん。奥さんが「主人が頑固なもので、私も家族も困っておりますが、納得させられちゃうんですよ・・・どうか・・・」と言う。困り果てた私は右隣の人の顔を伺うと「私は受け取りました」とその人が言った。・・・言葉がない。居住まいを正す私。*後ろにも何人かがいたようだった・・・。

何か私に伝えたい事があるのかなぁ〜。。。と考えてみた。そうだ!山本さんは金箔に拘っていらしたのだ!私が初めて描いた『白鷹伝』の時も「金箔に白い鷹を描いて欲しい」と仰っていたけど、印刷の事を考えて却下され、木目に白い鷹を描いた。二作目の『火天の城』は金のインクを背景に刷った安土城だった。2013年春に描き下ろした『花鳥の夢』は、小説の中の永徳が倒れた時、目の前に拡がったであろう花鳥画を思う存分きらびやかな金屏風風に描いた。
だから山本さんの「金色の表紙」の依頼だったのでは。。。と勝手に解釈して、この表紙絵になった。十三夜の月。四色刷り。原画と金箔のデータを合成した。(←金箔データ参考)

この文庫の解説は伊東潤さん。リズム良く山本小説を分析していて、伊東さんの声が聞こえてくる。山本さんは天国から照れていらっしゃるのではないかなぁ〜。
北村さゆり拝
 

─ 2014年12月13日(土)