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『ゆれる階(きざはし)』のジャケット。

村松友視さんの『ゆれる階(きざはし)』の表紙に
日本画作品〈映・春の風〉が使用されました。

『ゆれる階』村松友視著(河出書房新社 2022年10月30日発行)
原画はこちら → 

装丁デザイン;石間淳
装    画;北村さゆり

 

「挿絵の未経験者だけのコンペを受けませんか?」と言う電話。静岡新聞社からでした。同日、菊地信義さんから「貴方の絵を美術専門誌で見かけましたが、今までの作品ポジフィルムは手元にありますか?あるだけでいいので、全部見せていただけますか?」と、電話がありました。菊地さんは装丁デザイナーで、私の日本画作品を小説本のカバー絵として使いたいというものでした。1997年の2月初旬のこと。
新聞社のコンペには最終審査まで残り、最後の審査は、送られた小説に人物を入れた挿絵を描いてください、というものでした。最終選考で、私を選んでくださったのが連載小説を執筆する村松友視さんでした。村松さんと菊地さん。この二人によって、私は小説本に関わる仕事に足を踏み入れる事になったのです。
菊地さんは、村松さんの多くの本の装丁をされています。今年、藤枝市主催の個展に来てくださった村松さんは、「亡くなったと聞かされていた母親が、生きていると聞かされた思春期の出来事を書いている最中なんだけど、また菊地さんにデザインをお願いしているんだよ」とお話しされていました。しかし残念な事に2022年3月28日にご逝去され、それは叶いませんでした。菊地さんを失った村松さんが、藤枝で見た私の水面の絵を表紙に、と提案。デザインは何名かの中から、出版社が石間淳さんをご指名されたのです。
正直、「映・春の風」がどんな表1(本の顔)になるのか、全く想像がつかず、タイトル文字が読めないのではないか、、、と懸念しておりましたところ、石間さんのデザイン案を見せていただいた瞬間に、その心配は吹っ飛びました。
この本は、村松さんの自伝的長編ですが、私にとっては、恩人二人と、菊地さんを介して石間さんに繋がった、時間の証人的な塊です。
河出書房新社の太田さんにはもちろんのこと、綺麗に作ってくださった石間さんに感謝です。
書店で見かけたら、是非手に取ってみてください。 北村さゆり拝

 

 

─ 2022年10月31日(月)